ボクがラルグさまの婚約者になって、4日後。
毎日忙しそうにしてたラルグさまが、この日は朝から部屋でのんびりしてて、嬉しかったボクは腕に張り付いてニャンコになってた。
ラルグさまも侯爵家の昔話とかしてくれてて、ボクは興味津々でそれをきいてたんだけど。
途中でソノ気になったラルグさまがボクをお風呂に連れてって、バスローブを着たあと「たまには場所を変えるか」って呟いた。
「場所?」
この格好のまま移動するの? って思ったら。
腰に回った手に力が入って、急にブワッ……って周りの景色がブレた。
「わわっ!」
慌ててローブの襟につかまった時には、もうお風呂じゃない場所にいた。
え? ここどこっ!?
きょろきょろ見まわしたら右側の窓からお邸が見えた。
あ、そっかぁ。お部屋から見えてた離れかぁ。
外から見ると六角形をしてるその白い建物の中には仕切りがなくて、3方向に水色のカーテンが下がった窓と、天井にも明かり取りの窓がある。
お邸がある側を右だとしたらちょうど真ん中の壁の手前に、青いシーツが掛けられた丸いおっきなベッドがあって、壁際に椅子とか並んでるだけのシンプルなお部屋だった。
(な、なんか、まるでラブホっぽ……)
って思い掛けて赤くなったらラルグさまが、ここはずっと前の代の侯爵さまが、お妾さんにご奉仕して貰うために作った建物だって教えてくれた。
「父上は母上ひと筋の方だからそういった女は作らなかったが。俺はお前がくるまでは、時おり男娼たちを呼ぶこともあったからな」
ちょっぴり気まずそうにラルグさまは言ったけど。
健康な男のひとがそういうの求めるのは普通だし。貴族で同性愛者のラルグさまが娼館みたいなとこに行けなかったって事情はなんとなく分かる。
そりゃあ、何にも気にならないって言ったら……ウソだけどねぇ。
でも過去のことを気にしたって仕方ないもんね。
腕にスリスリしたボクをみてラルグさまは苦笑した。
「……ほんとに、お前は……」
首を傾けてキスしたラルグさまは、腰をひょいって抱えて向きを変えてから、丸いベッドにボクの体を押し倒した。
天上に3つある細長い窓からお日様の光が差し込んでる。
明るいお昼間からエッチしようとしてるって思ったら、ちょっと照れくさかったけど。
ラルグさまの顔がいつもよりちょっと野性的で。
なんだかドキドキして、ボクはいつもより興奮した気持ちになってた。
襟がするっとはだけられて、光の中に裸を晒される。
赤い目でじ~~っと見つめられて、恥ずかしくて、横向いちゃった。
「くくっ。これだけ散々抱かれてても恥ずかしいのか、お前は」
「だ……だって。明るいですもん……」
「俺はお前の全身をくまなく、いつも見てるんだけどな?」
「そ、それとこれとは、話がべつ……の…………んんっ!」
指先で左の乳首をつままれてビクッと体が跳ねた。
感触を確かめるみたいに、ちっぱいをフニフニ掴んで、その先っぽを指先でくるくると撫ぜる。
途端にぞくぞくっと快感が広がって、だんだんやらしい気分になってた。
「お前はあまり染まらないな。いつまで経っても、初々しいままだ」
言いながら被さってきた唇が、顎から首、首から胸へゆっくり辿っていく。
片手で左の乳首を弄りながら、右の乳首を口に含んで転がす。
形のいい薄い唇は、薄目を開けてみてたボクの眼差しまで犯すみたいに赤い視線を交わらせながら、くるくると乳首を弄んでた。
ラルグさまって、まつ毛も銀色なんだよね。
光に透けたそれが赤い目を包んでるから、まるで羽で飾ってるみたいに見える。
いつ見ても神秘的で、宝石みたいに綺麗な瞳。
ああ……好きだなぁって思う。
このひとが婚約者なんだって思うだけで、嬉しくて、飛び跳ねちゃいそうだもん。
「んっ……ん……んんっ……」
自然に声が裏返っちゃいそうで手の甲で口を抑えたら、上目遣いに見上げたラルグさまが「こら」って柔らかく呟いた。
「声を抑えようとするな。聞かせろよ」
「や……やですよ……恥ずかし……っ、あぁ……っ!」
脇腹をするっと撫ぜられてくすぐったくて思わず声をあげたら、くくって笑われた。
ホント。
いつも優しいのに、こういう時だけは意地悪なんだよラルグさまって!
それにドキドキしちゃうボクも、マゾなのかもしんないけどさっ。
袖を通したままのバスローブのうえで、両足をぐい~~っと広げられて。
まん中で元気にぴょっこりしてるのを片手でゆるゆる嬲られる。
「は……あ……あぅ…………あ…………」
ちゅ、ちゅって先っぽにキスして。
優しくて温かい舌先が、キャンディみたいに舐め廻す。
気持ちよくって、たまんなくて、両手でシーツを握ったままくねくね体が動いた。
「や……あ…………あ……あぁ…………」
初めてした後、ボクも何度かラルグさまにご奉仕してるんだけど。
やっぱりラルグさまの上手さにはかなわないんだよねぇ。
そもそも、モノの大きさも違うから、比べても仕方ないかもしんないけどさぁ。
って……………………あ、ダメだ……も、ダメ……。
「……ぅ…………あ……いっちゃ……あぁ……っ」
ハァハァしながら呟いたら、返事の代わりに唇が根元までちんぽを咥え込んだ。
ぬるんって感じの刺激に我慢できなくて、びゅくってちんぽが振動した。
「あっ、んんんっ!……ふ…………あ、あっ……!」
イッたばっかりで敏感になってるちんぽを意地悪な舌先が嬲った。
口の中に溜めたまんまのボクの液を、にゅるにゅる塗り付けるみたいに捏ね回す。
「やっ、やっ、くすぐった…………やっ! あぁっ!」
くくっと喉の奥で笑ったラルグさまは、そのままコクッと飲み込んで、濡れた口元を片手で拭いながら顔をあげた。
わ~~~~すっごい男っぽい表情してるっ!
「つい、苛めたくなるな」
「い……いつもラルグさま、意地悪ですよぉ……」
「そうか? ふ……そうかもな」
ラルグさまは、くすくす笑いながらベッドに座って胡坐の中にボクを抱き込んだ。
背中から温かい腕にすっぽり包まれるこの体勢が、一番ホッとする。
また大きな手がボクの体を弄りはじめて、続く愛撫にうっとり身を任せてたら。
コンコン!ってノックの音がした。
急な音にビクッとなりながら扉を振り向いたら。
「坊ちゃ~ん。お呼びでしたかね~?」
扉から聞こえたのはアーネストさんの声だった。
その声にラルグさまは「ああ」って低い声で返事をした。
「入れ、アーネスト」
「はいは~い」
呑気な調子で答えたアーネストさんが扉をあけて、ひょこっと顔を覗かせる。
その後ろにはウォルマーさんもいた。
「お? ちょうどいいタイミングでしたかね?」
離れの扉があるのは、ベッドのある側から見て右側。
胡坐をかいたラルグさまの太ももに引っ掛けるみたいに両足を広げられてたボクを見て、アーネストさんがニッと楽しそうに笑う。
ボクは真っ赤になって「きゃうっ」って足を閉じようとした。
ら、ラルグさまの手で止められた。
「やっ! ラルグさまっ」
「そこまで恥ずかしがることもないだろうが。アーネストにはすでに隅々まで見られてるんだ」
「で、でも……っ」
ウォルマーさんもいるしっ。
そ、そりゃ、男同士だけど、恥ずかしいものは恥ずかしいしっ!
って思ってるうちに、外側から回った手が、太ももの内側からボクの足を押し広げて、股間を見せびらかすみたいにして持ち上げちゃった。
「や、やだっ! やっ!」
「はははっ! 相変わらず初々しいっすねぇ」
アーネストさんがシャツの襟元を緩めながらスタスタとベッドに近づいてくる。
そのあいだに後ろを振り向いたウォルマーさんが、扉にガチャンと鍵をかけた。
その途中で(まさか)って思ったんだけど。
窓辺の椅子まできた2人が服を脱ぐのを見て、まさか、が確信になった。
「…………ラルグ……さま…………」
急に、ぶるぶる体が震え始めた。
ウォルマーさんはパンツだけになってからベッドの反対側へぐるっと回り込んで、片足を折り曲げるようにして端っこに腰掛ける。
アーネストさんは全部脱いでムキムキな体を堂々と晒したまま、足を広げて抱え込まれてたボクの前まで近づいてきた。
「……あ…………」
アーネストさんはいつも通りの穏やかで飄々とした表情だった。
なのにボクは、怖くて怖くて、震えてた。
ギシッとベッドの軋む音がして大きな影が覆い被さる。
ひょいっと伸びた手が、ボクの脇腹からちんぽの横を通ってお尻までの肌を撫でおろして、返す手でタマをぐにゅっと揉む。
「…………んんっ!」
自分でもビックリするくらい甲高い、裏返った声がでた。
「うんうん。いい声だ」
爽やかな声で笑ったアーネストさんは、そのままゆっくりと身を乗り出して……。
ラルグさまに、キスをした。
「…………っ?」
ビックリして、思わず上を見ちゃった。
ボクを挟んで向かい合ってるラルグさまとアーネストさんが、頭のすぐうえで、何度も舌を絡め合って気持ちよさそうにキスしてた。
なんとなくカァっと赤くなって、目のやり場に困って横を見たら、ベッドの端っこに座って眺めてたウォルマーさんと目が合った。
細い目は面白そうに目尻を下げてる。
ボクを揉みもみしながらラルグさまとキスしてたアーネストさんは、しばらく堪能してから顔を離してボクを見降ろした。
「そりゃビックリするよなぁ。けどよぉ、ラルグ坊ちゃんに最初の手解きをしたのはオレなんだぜ? 言ってみれば床技の師匠みたいなもんだよ」
「……えっ!?」
「なにを言ってる。貴様なんぞ、ただの生きた張り型だ」
「坊ちゃん、言い方!」
「ここは、俺の望み通りに動くだけの肉棒だろうが」
「まぁそうなんですけどね」
立ち上がりかけたモノをグニグニ掴まれてても動じないアーネストさんは、あっけらかんと笑う。
ボクはもう、怖かったのも忘れて、ポカンとしたまま固まっちゃってた。
なにっ、この会話っ!?
た、確かに普段からこの2人って、ずけずけと憎まれ口を言うラルグさまとそれを笑って受け流すアーネストさんって感じで、すごく仲良しなんだけど。
相手が6つも年上だからか、ラルグさまのほうがちょっとだけ甘えてるみたいな口調になってるのが、ボク的にはビックリ。
いつのまにか縮こまってたボクをゆるゆる嬲ってから、ふっと苦笑したアーネストさんは、姿勢を戻してベッドのうえに胡坐をかいた。
「さて坊ちゃん。さすがに説明してあげなきゃ可哀相っすよ? ユウト坊ちゃん、すっかり怯えちゃってるし」
「ああ」
ラルグさまはボクの足を前へ戻してから横向きに抱き直した。
片手を頬に添えながらチュッと口づけて、溜息をつくみたいにゆっくりした口調で言った。
「以前、兄上に悪戯されて、泣いただろう?」
「え? ……あ……はい」
図書室でのこと?
もう半月くらい前の出来事だから、そんなのすっかり忘れてたっ。
「兄上にあれをきいた時から、お前には心の傷があるのだろうと思っていた」
「と、らうま??」
「おそらくだが、幼少期に大人に悪戯をされ、それをお前が誘惑したせいだと詰られた経験があるんじゃないか?」
「……っ」
ドキッと心臓が飛び跳ねて、赤い目を見つめた。
な、なんでラルグさまが知ってるの?
ドキドキ鼓動が走り出して、なんでなんでって混乱した頭に、遠い記憶が蘇った。
5歳くらいのちっちゃい時。
大きなショッピングセンターのゲームコーナーで遊んでたら、後ろにいたオジサンにいきなり抱き上げられて攫われちゃったことがあった。
すごく怖かったって記憶だけで、なにがあったのかは、ほとんど覚えてない。
でも、警察らしいオジサンたちが見つけてくれたあと、ボクはママのとこに戻されたんだけど、そこにママの両親……ボクの祖父母にあたるひとたちがいて。
怖い顔で「子供のくせに、イヤらしいことをして!」って叫んだおばあちゃんに、お前のせいで我が家が恥をかいた、みたいなことを言われた。
どうしてそんなこと言われるのか分かんなくて。
おばあちゃんたちと口論してたママを、泣きながら見上げてた。
そのあと、お仕事が無くなっちゃったママはよく怒るようになった。
それから半年くらい経って。アパート前の駐輪場で、自転車の荷台に使う紐でボクの首を締めようとしてたのを通りがかりのひとが見つけて……ママは逮捕されることになったんだ。
それから10年以上経ってるし。
保護施設のひととか、養父母に可愛がられてた年数のほうが長いから、もう思い出すことは無くなってたんだけど。
「まぁ~~可愛い顔してますからねぇ。悪戯したくなる気持ちも分からなくはないなぁ」
しみじみと呟いたアーネストさんの言葉で、ズキッと胸が痛んだ。
チラッと仰ぎみたラルグさまは、またボクを見降ろして髪をくしゃくしゃ撫ぜた。
「ユウトのせいではないんだがな。そう言われると、自分が男を誘惑していると責められているように感じて、辛いんだろう?」
「………………」
だって。ボク、何にもしてないのに。
ちっちゃい時から女の子みたいだからって。「お前のせいで悪戯したくなるんだ」って言われてたんだもん。
滲んだ涙を優しい唇が吸い取って、ラルグさまは穏やかに言葉を続けた。
「俺を慕ってくれるのは嬉しいんだが、そのトラウマのせいで俺以外の男をまったく受け付けられないというのでは話にならないからな。むろん、他の誰にも触れられないで済むのが一番だが……―――この俺自身が、伽をさせることを選択した」
「ラルグさま……」
「だからな。少々荒っぽいやり方ではあるが、いまのうちに他の誰かに抱かれることへの抵抗感をすこしでも払拭しておくべきだろうと考えたんだ」
「それで……アーネストさんたち、に?」
「ああ。こいつらなら傷付けられる心配はないからな」
「オレらは役得ですしねぇ」
ラルグさまは、それにうんうんと頷いたウォルマーさんを振り向いた。
目が合ってズリズリ近づいてきた逞しい腕に、ボクをほいっと渡す。
ウォルマーさんはそのまま元いた位置まで下がって、バスローブで包むみたいにしてボクの体を膝の上に抱え込んだ。
「え……あの…………?」
「僕らは、もうしばらく見物だね」
「えっ!?」
ウォルマーさんが「ほら」って顎をしゃくった方をみたら、後ろ肘をついたラルグさまのすぐ前に、アーネストさんが膝立ちしてるとこだった。

