PR

#08 メイドさんの話

ボクの優しいご主人さま

なんだか朝からノリノリになっちゃったラルグさまの下で喘いでたら。
部屋の扉がガチャッて開いて2人のメイドさんが入ってきた。

両足を広げられてる最中だったから、うっひゃあ!って思ったけど。
ん?と壁の時計を振り返ったラルグさまは、小さく舌打ちをしてから、渋々って表情のままボクの上からどいた。

「……いいトコだってのに」

「おはようございま~す。ラルグリートさま」

「今日も、とってもいいお天気ですわねぇ!」

若いメイドさんと、中年のメイドさん。
フル勃起で降り立ったラルグさまを見ても、ぜんっぜん表情を変えない。
何事もなかったみたいに窓を開けて空気を取り込みながら、白い洗面器にもくもく湯気の立ってるお湯を注いだり、タオルを準備したりしてた。

すごい。さすがプロ。

ラルグさまもめっちゃへ~ぜんとガウン拾ってる。

あ~~でも、そっか。
健康な男のひとなら、朝って何にもしなくても勃つっていうし。
元の世界でも、外国のひととか裸で寝る人も多いみたいだから、いつものことって感じで気にならないのかなぁ?

肩にガウンを引っ掛けたまま顔を洗ったラルグさまは、クローゼットの前でちょっと悩んでから、暗い青色のシャツと白いジャケットとズボンをだして、ぽぽいとベッドに投げた。

あ、パンツはビキニタイプなんだ。

しょぼんしててもおっきいのが窮屈そうだけど、イヤらしい感じは全然しない。
シャツに袖を通す仕草も、ちょっと長めの銀髪を襟元からはらう仕草も……なんか……モデルみたいだなぁ。

シーツを両手で抱えたままそう思ってたら、身支度を終えたラルグさまが振り返って指先でちょいちょいとボクを呼んだ。

「あ、はい」

女の人たちの前で裸なのは恥ずかしかったけど、ラルグさまもへ~ぜんとしてるし、ボクも慣れなきゃなって思ってベッドから降りようとした。
けど、立てなかった。

「あ、あれ?」

力が抜けて、ぽすっと後ろに倒れこんじゃった。
背中から太ももにかけてが重くて、お腹の奥のほうがズキッと痛い。
これって、昨夜のアレのせい?
それを横目で見てた中年のメイドさんが「あらまぁ」って小さく呟いた。
目を見開いたラルグさまは、すぐに「ああ」って苦笑する。

「そうか。最初から無理をさせたからな」

吊るし服の左側の引き出しから畳まれた布を取り出したラルグさまは、スタスタ歩いてくると、ボクの横に腰を下ろして面白そうに着付けを始める。

着せられたのは大事なとこだけ包む袋つきのTバックと、膝くらいまで長さがある白くてぶかぶかなシャツだった。袖も長くてボクの手は指先しか出ない。
もしかしてこれ、ラルグさまのシャツ??

な、なんかまるで、お泊りした翌日の女の子が彼氏の服着るみたいな……。

そう思ってボンッと赤くなってたら、ひょいっと抱き上げられたボクの体はベッドの片側へ寝かされて上掛けを掛けられた。

「え、あの?」

「俺はすぐに出掛けなきゃならん。お前はこのまま大人しく寝てろ」

「は、はい」

い、いいのかな、ボクひとりでラルグさまのベッドに寝てて。
ボク奴隷なんじゃないのぉ??

「あとで食事を持ってこさせる。部屋の中はべつに好きに弄ってて構わんが、無理に動こうとするなよ? 熱を出すこともあるからな」

クシャクシャッと髪を撫ぜて、そのままメイドさんたちと部屋を出てったラルグさまを見送って(奴隷って???)ってまた思った。


やっぱり、どう考えてもラルグさまの扱いって、こ……恋人……だ、よね?


出会ってすぐの時にも「性処理の相手だ」って言われたし、昨夜も「奴隷だ」って強調されたけど、なんかわざとボクにそう言い聞かせてるみたいで、虐げられてる気はぜんぜんしない。
たしかに会って2日で抱かれちゃったけど、好きな人って自覚したあとだったから、単に初めてで嬉し恥ずかし怖かった!って印象でしかないし。


ただ。


ゴロッと横になったら、首元でチャリッと音がした。
その音で急に、お部屋がシーンとなってるのに気づいて、胸がすうっとなる。

持ち上げた両手に嵌まってる金色の手枷と、首から下がる鎖。

これが、ボクの現実……なんだよね……。


昨夜の領主さまやお兄さんたちの反応からすると、男を抱くって行為自体も、べつに当たり前じゃん?って素振りだったし。
あの人たちにとっては「異世界人=魔力の供給源どれい」なんだろうしなぁ。


これからどうなるのかな。
ラルグさまは徐々に調教するって言ってたけど。

昨夜も優しくしてくれたし、きっとダイジョウブ、だよね??


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ぽふぽふって叩かれてるのに気付いて目をあけたら、さっきお部屋に来てた中年のメイドさんが笑顔で覗き込んでた。

「ユウトちゃん、だったかしら?」

「あ、はい」

「わたしの名前はメメミル。ラルグリートさまから面倒をみるように言われたわ。なにか困ったことがあったらわたしに言ってね」

メメミルさんは白っぽい金髪を後ろでまとめた女の人だった。
たぶん40代か50代くらい? ちょっとだけ太ってて、目が小さくて、口がおおきめで、左目の下にほくろがある。

ボクを先にトイレまで連れてってくれて、ソファに座ったボクの前にお盆に乗せたお皿を置いてくれた。
丸い木のお皿に入ってたのは、木の実が混じった白くて甘いおかゆみたいなの。
木の匙でふーふーしてたボクの傍らで、ベッドのシーツを変えたり部屋のお掃除をしながら、いろいろ話をしてくれた。


それによると、この国の名前はグラナート王国っていうらしい。
ボクたちがいる場所は王都から南に400キロくらい離れた国境付近にあるフルノームって土地で、ニコラルド・フォン・マルベスカ侯爵が治めている領地。

代々続く古い家系だから縦横の繋がりが広いし、いろんな商売をしてるからお金持ちだし、ご家族み~んな優秀な魔法師で功績もいっぱい立ててるから、王さまもご機嫌をうかがっちゃうくらい偉い貴族。
だけどいまの侯爵さまは、愛妻家で子煩悩でのんびりした性格で、領地のひとたちからもすごく慕われてるんだって。

で、侯爵さまには、もともと幼馴染みでラッブラブな奥さまとの間に3男2女がいて、ラルグさまは4番目の子で三男坊。
ご家族みんな上級貴族のよっゆーって感じで穏やかだし、家族仲もいいけど、魔法の実力ではラルグさまが一番強いからお兄さんたちも頭があがらないらしい。

「なんといってもラルグリートさまはねぇ、大陸で5指に入るって言われるくらい有能な魔法騎士なのよ」

「魔法騎士?」

「ユウトちゃんは異世界から来てるけど、魔法師や騎士は分かるのよね?」

「はい。本で読んだから何となく」

「この世界ではね、国や土地同士の争いもあるんだけど、魔物との戦いのほうが深刻なの。普段は騎士が数人いれば討伐できる程度だけど、十数年に1度くらい大群が現れる時期があって、それに備えて魔法で戦える騎士が育成されてるのよ」

「へぇ~~~」

「国中の騎士の中でも、魔法騎士の称号を貰えるほど有能な使い手は全体の1割程度って言われてるけどね。ニコラルドさまのお子は、まだ未成年の下のお嬢さま以外全員が魔法騎士なの」

「え、お姉さんも? 女の人も戦うのっ!?」

「そうよ。エリノーラさまは普段はおしとやかな方だけど、とても強い騎士でもあるの。武術大会の成績で比べるなら、ラルグリートさまの次がエリノーラさまなんですって」

お夕飯の時にくねくねしてた、あの可愛い系のお姉さんが?
チラッとしか見えなかったけど、首や腕も細くって、きっとオシャレやお菓子の話が好きなんだろうな~~って感じの女の人だった気がするんだけどなぁ。

「だからねぇ、ユウトちゃんがラルグリートさまに拾って頂けたのは、幸運だったと思うわ」

隣に座ったメメミルさんは、木の匙をくわえてたボクの頭をよしよし撫ぜた。

「発見される異世界人は年に数人くらいだそうだけど。見つかれば例外なく性奴隷として扱われてしまうの。それでも女性ならまだ受け入れられるけど……男性はね。大抵のひとは精神を病んで衰弱死してしまうか、見た目が悪くて使い物にならないって理由だけで殺されてしまうみたいなのよ」

「あ~~~そう、ですよね……」

異世界人は性奴隷で、犯す価値もなければ殺されるだけ。
ボクはラルグさまが好きだったし、優しくしてもらえたから平気だったけど、普通の男のひとだったら男のひとに強姦されるなんて絶対嫌だって思うだろうし。あんなの無理やりされたら体だってめちゃめちゃになっちゃうよね。

ああ……やっぱり、それが現実なんだなぁ。

しょんぼりしたボクを見て、メメミルさんは「大丈夫よ」と苦笑した。

「マルベスカ家は国内屈指の魔法一家だし、その最たるラルグリートさまが契約主である限り、国王陛下ですら譲渡を強いることはできないはずなの。
貴重な7色だし、侯爵さまだってユウトちゃんみたいな幼い子が悲惨な目にあうのを傍観するような方ではないから、きっと大切に保護してくださるわ。
だから…………その、ユウトちゃんも辛いでしょうけど、ラルグリートさまのお言いつけをよく聞いて、可愛がっていただくのよ?」

「……はい」

メメミルさんはちょっと言いづらそうにしたけど、ボクはコクンと頷いた。

そうだよね。
ラルグさまがご主人さまになってくれたから、ボクは無事で居られてる。

それにボクは、無理やり性奴隷にされたわけじゃなかった。
最初に訊かれた時は突然だったけど、2回目は「送ってやれるぞ」って言われたのに自分でお傍にいることを望んだんだもの。

守って貰うだけじゃなくて、自分でもちゃんとラルグさまのお傍に居られるように努力しなきゃ。

「あ、そうそう。ラルグリートさまがお留守の間は、わたしたちのお手伝いをしていればいいそうよ。明日、お邸を案内しがてらいろいろ教えてあげるから。今日はいい子で寝ててね」

「はい」

ニッコリ笑ったメメミルさんは、お盆とお掃除道具を持って出ていった。


言われたとおりまたベッドに潜り込んだ。
でも眠気はもう全然なくなってて、茶色い格子の天蓋を見上げながら考えてた。

いまはボクの見た目が子供だから可愛がってもらえてるけど。
さすがに20歳超えてからもいまのまま居られるとは思えないし。
この世界で生きてこうって思うなら、なにかそれ以外にも役に立てることがなきゃ厳しいよね?
でも、抱かれる以外で、ボクがお役に立てることって何だろ?

「う~~~~ん……」

そうしてウンウン言ってるうちに、ふっと思いついた。


そもそも異世界人が性奴隷にされてるのは、供給できるくらい魔力が余ってるからなんだよね?

だったら、ボクも魔法を使えるようにならないのかな?