揺すられて目を覚ますと街だった。
うっかり寝ちゃってて(あ……)って赤くなったけど、先に降りたラルグさまは気にせず、ボクの脇腹をつかんでひょいと地面へと下ろす。
なんか、軽々と持ち上げられるから、ほんとに子供になった気分。
きょろきょろ見まわすと、修学旅行とかで見た繁華街みたいな場所だった。
馬を降りたとこの前は石壁の宿で、その周りには土産ものを売ってるっぽい店や、酒場っぽい店、食料品を売ってるっぽい売店や、飲食店っぽい店がある。
全部「ぽい」なのは書いてある文字が読めないからなんだけど、看板に絵が描いてあるから何となくは想像できる。
あれ、そういえば文字読めないのに、なんで言葉通じてるんだろ?
通じないと困るからありがたいけど、魔法補正みたいなものなのかなぁ。
厩舎に馬を預けたラルグさまは、アーネストさんを振り返った。
「俺は先に入って部屋を借りておく。すまんが、こいつに合いそうな服を調達してきてくれるか。このままじゃ目立ってしょうがない」
「はいはい。りょ~かいっす」
領主さまのお屋敷に住み込む兵士で、ラルグさまの従者って立場らしいアーネストさんは、ひらひらっと手を振って離れてく。
それを見送ったラルグさまは、ボクの肩を抱いたまま宿へ入っていった。
正面にあったカウンターで暇そうにあくびしてたヒゲのおじさんが、お?って振り返ってボクをジロジロと眺める。肩を抱いてた手が、首の後ろからグイっとラルグさまの胸にボクの顔を押し付けた。
宿のおじさんから鍵を受け取ったラルグさまは、二階へあがっていく。
鍵の持ち手のとこに描かれてる模様……文字かな? と同じのが描かれたプレートの貼ってある部屋が、今夜借りた部屋だったみたい。
入ってみると、けっこう広い部屋だった。
大きいベッドが2つに、丸いテーブルと椅子2つ。ベッドの間の机にランプが一個。すこし開いた窓から街のガヤガヤという音が聞こえてくる。
椅子に腰を下ろしたラルグさまは、腕を引っ張ってボクを太ももの上に座らせた。
そしておもむろに、ボクの制服のボタンをはずしはじめた。
「え……あ、あの……?」
「この服じゃ、異世界人ですと看板背負って歩くようなものだからな。どうせ飯の前に風呂にいく。ここで全部脱いでしまえ」
ええっ? そ、その場合は風呂で脱ぐんじゃないの~~!?
あわあわしたけど、ボクに逆らう権利はない。
あっという間にパンツまで全部脱がされて、床に落とされた服は、ラルグさまがパチンと指を鳴らすと同時に【異空間収納】って魔法で仕舞われたらしい。
「これも付けておかないとな」
再びパチンと響いた音と共に首輪が現れた。
5センチくらいの幅で、前側に1個だけ輪っかがついてる金色の綺麗な首輪。
さらに指が鳴ると今度は両手首にも金色の手枷が現れて、首の輪っかから下げられた細い鎖でそれぞれに繋がれた。鎖が長いからそんなに不自由じゃないけど、こうするともう、どっからどう見てもボク奴隷ですって感じ。
「くくっ。これで奴隷らしくなった」
首の輪っかで引っ張られて、チューされる。
ジュ……チュル……って音がするくらい、何度も何度も舌を吸われる。
きっちり服着たラルグさまの太ももの上で、素っ裸にされて、首輪や手枷をつけられて。
いままで生きてきた中で最高に訳わかんないシチュエーションなんだけど。
それに興奮して勃ちそうになってるボクが、いちばん訳わかんない。
なんで? ボクどうなっちゃってるの~~~~っ!?
やばいやばいやばい! って思った時、ガチャッとドアが開いた。
「お?」
すたすた部屋に入ってきたアーネストさんは、やっとチューから解放されてくたっとなったボクを面白そうに覗き込んだ。
「坊ちゃん、相変わらず手がはやい」
「人聞きのわるいことを言うな。奴隷を奴隷らしい格好にしてやっただけだ」
「はいはい。で? このまま風呂っすか?」
「ああ」
言うがはやいか、ラルグさまはボクを抱えて部屋の外へと歩きだす。
ボクだけ裸のままへ~ぜんと廊下を歩かれてめちゃくちゃ恥ずかしかった。
通りすがりの人たちがみんなラルグさまの肩で震えてたボクを振り返る。でも、ラルグさまもアーネストさんもまったく気にしてない。
そ、そうだよね。ボクは奴隷だもんね。
奴隷は裸が制服、裸が制服、裸が制服……って…………ダメだ、全然思えないっ!
やっぱり、恥ずかしいよぉ~~~っ!
たぶん全身真っ赤になってたボクは、大衆浴場みたいな場所に連れ込まれた。
腰の高さくらいの棚に座らされてプルプルしてるうちに、ラルグさまたちも裸になって、またボクを抱きかかえたまま浴場に入っていく。
丸い大きな浴槽の縁に座らされたボクは、手桶で頭からザバ~~っとお湯を掛けられて、2人掛かりで全身丸洗いされた。ていうか、泡をつけて弄ばれた。
どういう仕組みになってるのか分かんないけど、首から繋がってる鎖は伸縮自在で、洗われてる最中は短くされて両手を首の前で固定されたままだった。
自分ではなんにもできないまま、4つの大きな手であちこち洗われる。
くすぐったくて、ボク悶えっぱなしだったんだけど、絶対2人とも楽しんでたと思う!
お湯に足を浸したまましばらく放置されて。
その間に自分の体を洗ったラルグさまは、太もものうえに向かい合わせにボクを座らせて湯船に浸かる。
洗われただけで疲れちゃったボクは、くたっと胸に縋りついた。
「それにしても、大人しい子っすねぇ」
背中に手を滑らせて悪戯してるラルグさまの斜め向かいで、お湯を掬すくった手で顔を拭う仕草をしながら、アーネストさんがくすっと笑った。
「異世界から渡ったばかりなら普通もうちっと混乱してそうなもんすけど。奴隷契約の効力があるとはいえ、ほとんど抵抗らしい抵抗してませんし。男の坊ちゃんに抱かれてても嫌がってる素振りはありませんよね?」
「ああ。それは俺も不思議に思ってる。俺が知る限り、異世界人はたいてい状況が呑み込めず、最初のうちは泣くか喚わめくかのどっちかといった感じなんだが。お前はこの状況をかなり理解して納得しているような様子だな?」
「ラ、ラノベとかでよく見てた展開だから」
「ラノベ?」
「あ、えっと、娯楽で読む本? で、異世界に転生するとか、魔法で戦うとか、そういうお話をいっぱい読んだことあるから。なんか知ってるなぁって」
「お前のいた世界には魔法が無いんだろう? なのにそんな伝承がされるのか?」
「魔法が使えないから、こうなったらいいなぁって、空想してるんです」
「ふん。なるほどな」
「それに……ボク……」
「うん?」
「もともと……男同士とか、い、嫌じゃないっていうか…………その……」
言ってて、カァ~~~っと顔が熱くなった。
いままで自覚してなかったけど、ここまでの自分の反応を考えればそうだとしか思えない。
たぶん最初っからボクは同性愛者なんだ。
だからラルグさまの綺麗な赤い瞳に、女の子みたいな恋をした。
恥ずかしくてぎゅっと目をつぶったら、ふふと笑ったラルグさまが、額にチュッとついばむようなキスをする。
「それは、ますます俺にとっては好都合だな」
「っすねぇ。嫌がるのを無理矢理ってのは、坊ちゃんの嗜好じゃありませんし」
「ああ。屋敷に戻ったら存分に可愛がってやる。楽しみにしてろ」
「う……うう…………はい……」
ドキドキしながら答えたら、2人にニヤッとされた。
存分にってどのくらいかなぁ。もしかして2人に遊ばれちゃうのかなぁ。
いちおう男同士のそういうのの知識もちょっとは持ってるけど。
ボク痛いのも怖いのも嫌だから、できるだけ…………優しくしてくれるといいなぁ。

